「経営実戦論」が開講、マーケティング視点でのアプローチ

一橋大学大学院経営管理研究科・経営管理専攻MBAプログラムを対象とする、三枝匡経営者育成基金の寄附講義「経営実戦論」が2021年8月28日に開講しました。夏学期の短期集中コースであり、担当教員は土合朋宏客員教授です。
土合教授は外資系戦略コンサルティング会社を経て日本コカ・コーラ(株)に入社、リサーチを担当したのち、マーケティング本部で「ファンタ」「アクエリアス」「爽健美茶」など既存ブランドの立て直し、「綾鷹」などの新製品開発を主導しました。同社でバイスプレジデント執行役員を務めたのちは、20世紀フォックスホームエンターテインメント代表取締役社長などを歴任。現在はワーナーブラザースジャパンの上席執行役員・CMOとして全部門のマーケティングを統括しています。
当講座は「経営実戦論」との講義タイトルどおり、マーケティング視点からビジネスの諸問題に迫る、実践的な講義です。著名な経営者やクリエイターをゲストスピーカーに招きながら、8月28日から9月18日までの4回の土曜日を使って7コマの講義が展開されました。


未来を切り拓くマーケティング思考

8月28日の初日には、第1回「旅の始まり:マーケティング思考の要諦をおさえる」と、第2回「新製品開発・新事業立ち上げのコツ:どう新しい価値を作るか、伝えるか」の2コマの講義が行われました。
当初は、千代田キャンパス大講義室での対面授業を予定していました。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により東京都への緊急事態宣言の期間が延長された状況などを受け、「オンライン」プラス「対面」のハイブリッド形式に変更になりました。教室では受講者(この日は20名弱)がお互いの間隔を広くとって着席、オンラインの受講者(同30名弱)はそれぞれZOOMで参加する形式で、オンライン受講者の様子はスクリーンで講義室に映し出されます。
1コマ目は土合教授による、講義のミッションの説明からスタートしました。「自分はマーケティングが専門だけれど、マーケティングそのものを教えるというより、講義を通して、未来を切り開く、未来を新しくつくっていく人を一人でも多く育てたい」。さらに教授は、「マーケティングのエッセンスは、世の中にない新しい価値観を見つけ、それを伝えて売っていくこと。新しい価値を創造する手段はマーケティングのみではないが、自分の人生を振り返ると、マーケティングのノウハウ、ツール、考え方は非常に有効なので、それをぜひ皆さんにお伝えしたい」と意気込みを述べました。
また、「現場で起きることと、古典的な教科書のセオリーとの間にズレが生じることがある」ことに注意を喚起し、講義のスタイルとして、「教科書通りに教えるのでなく、リアルなビジネスの現場、具体例から話をして、考える素材を提供していきたい」と伝えました。

 

コンセプトや戦略の重要性を具体例で学ぶ

講義全体のイントロダクションに続き、講義は本題へ。素材として、教授自体が関わった商材のプロモーション動画などを映しながら、リアル参加の受講者と、オンライン参加の受講者の双方に手を挙げてもらって答えてもらうという、ハイブリッドかつインタラクティブな形式で進んでいきます。
例えば、キー概念である「コンセプト」については、問いに対する学生の解答を一通り聞いたのち、教授は「コンセプトとは、誰でもわかる明瞭な言葉で、その商品・サービスの本質を表現したもの」と定義。続いて、コンセプトの具体的要素として5項目を挙げ、コカ・コーラや映画『銀魂』などの具体的な商材のコンセプトを例示しながら、コンセプトがなぜ重要なのか、その理由をテンポよく解説していきます。
二つ目のキー概念は「戦略」です。教授は、コーポレートレベルの企業全体戦略と、担当者が実際に現場で使える戦略の違いを述べた上で、コンセプトと戦略の関係性について、具体例をもとに説明。なぜ戦略が大事かについては、「実行すべきこと・しなくてもよいことが明確になる」「優先順位をつけられる」など、4つの側面から解き明かしました。
第1回の講義はそのほか、「ターゲティング」と「定性調査と定量調査」を主要トピックとしてとりあげ、調査に関しては、「最も大事なのが、仮説を持っていること」と強調。学生からも活発な質問が飛び交いました。

 

新しい価値創造をどうつくり、どう伝えるか

2コマ目の講義は、ゲストによる講演から始まりました。この日のゲストは、元ロクシタン代表取締役社長・会長であり、現在、株式会社エトワ代表取締役の鷹野志穂さん。鷹野さんの講演(約50分)と、鷹野さんと土合教授によるディスカッションおよび質疑応答が行われました。
その後、再び土合教授の講義に戻り、1コマ目の続きとして、「新しい価値をどう作るか・伝えるか」というテーマで進んでいきます。ここでの題材は、教授自身が日本コカ・コーラにおいて主導した、新製品「綾鷹」の開発事例です。20年以上、日本茶のマーケットでブランドを築くことができなかった日本コカ・コーラが、新しい日本茶を世に出していくにあたり、どんなハードルがあったのか。土合教授は裏話もふくめ、教科書のセオリー通りにはいかない現場の苦労を生々しく語ります。一例を挙げれば、農産物であり、年によって、また、採れる畑によっても味が変わる日本茶を、どうやって同じテイストのペットボトル商品として出していくのか。そこには、安定供給のための“仕組み”を創造する、という、単に一商品の開発の枠にとどまらないイノベーションがありました。
最後に土合教授は、「新しい価値創造」においては「新しくて強いコンセプトの開発」がカギとなること、リーダーはとにかく諦めずに、強い意志をもって、いろいろな人を巻き込んでいく必要があること、などを熱く語りつつ、第2回の講義を締めくくりました。

 

ゲストスピーカーの皆様をお招きしました

8月28日(土)第2回講義 株式会社エトワ代表取締役社長 鷹野志穂様にゲストとしてご登壇いただきました。

9月4日(土)第4回講義 株式会社EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクター / Co-CEO 佐藤夏生様にゲストとしてご登壇いただきました。

9月11日(土)第5回講義 一般財団法人池坊華道会評議員 森由華様にゲストとしてご登壇いただきました。

9月18日(土)第6回講義 株式会社資生堂 代表取締役 社長 兼CEO 魚谷雅彦様にゲストとしてご登壇いただきました。

8月28日(土)第2回講義 株式会社エトワ代表取締役社長 鷹野志穂様

 

9月4日(土)第4回講義 株式会社EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクター / Co-CEO 佐藤夏生様

 

 

9月11日(土)第5回講義 一般財団法人池坊華道会評議員 森由華様

 

 

9月18日(土)第6回講義 株式会社資生堂 代表取締役 社長 兼CEO 魚谷雅彦様